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チューリップの育種と分類

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チューリップ遺伝資源センター

2200品種のチューリップを保存する「富山県チューリップ遺伝資源センター」

チューリップの育種

チューリップの品種数はいったいどのくらいあると思いますか?
オランダ王立球根生産者協会(KAVB)の品種登録サイトには6519品種が登録されています(2018年3月現在)。
それではこれらの品種はどのようにつくられたのでしょうか?まずは右の写真3を見てください。これはチューリップの種です。チューリップに種があるのをはじめて知った方がほとんどだと思います。
咲いた花の雌しべに花粉がつき、受粉すると雌しべのサヤの部分が大きくなり、2カ月ほどすると茶色く変色します。そのサヤの中にできるのがこれらの種なのです。
これを秋にまくと翌年春には芽を出し、ネギの苗程度に育ちます。その“ネギ”からとれたのが「実生1年目」と記されたシャーレの中にある、マッチ棒の先2個分くらいの球根です。この球根を植えて、今度は少し大きい球根をとれます。これを繰り返し、5年目に初めて花が咲くことになるのです。
富山県園芸研究所が開発したチューリップは33品種(2018年3月時点)にものぼります。中でも黄小町は県の基幹品種であり、オランダでも人気が高く世界的にも評価されています。


「チューリップの15分類」

「オランダ王立球根協会」により1981年に制定された分類法が世界的にスタンダードとなっています。開花時期によって超早生(3月下旬~)、早生(4月上旬~)、中生(4月中旬~)、晩生(4月下旬~)の4つに大別し、その後、花の咲き方や大きさなどを考慮し15通りに分類されています。

分類記号開花期特徴
1SE2:早生(Single Early Tulips)(一重早咲き系)深いカップ状の小さめで丸弁の花びらを持ち8cmほどの大きさで、早春に花を咲かせます。15~50cmの草丈に成長し、茎は強くガーデン向きの優れたグループ
2DE2:早生(Double Early Tulips)(八重早咲き系)二重の鉢状の12-13cmの大きさで牡丹に似た花である。早春に咲き、花持ちが長く続きます。25~40cmの草丈に成長し、ガーデンやコンテナガーデンに向いています。
3T3:中生(Triumph Tulips)(トライアンフ系)大きく単一のカップ型の花で、春に花が咲き長く咲きます。35~60cmの草丈に成長し、切花向けに多くの品種が作られています。
4DH2:早生(Darwin Hybrid Tulips)(ダーウインハイブリッド系)卵型の非常に大きく鮮やかな色の花が特徴です。茎は強く50~70cmの高さに成長します。
5SL4:晩生(Single Late Tulips)(一重遅咲き系)楕円形または卵型の花で、45~80cmの高さに成長します。背が高いためボーダーガーデンによく利用されます。
6L4:晩生(Lily-Flowered Tulips)(ユリ咲き系)長い花の尖った花びらを持ちます。晩春に花を咲かせ、50~65cmの高さに成長します。
7FR4:晩生(Fringed Tulips)(フリンジ系)SL系統に似ていますが、花弁の縁が房状になっています。晩春に花を咲かせ、40~80cmの高さに成長します。
8V4:晩生(Viridiflora Tulips)(ビリディフローラ系)グリーンチューリップとも呼ばれます。SL系統に似ていますが花びらは部分的に緑色で晩春に花を咲かせます。25~60cmの高さに成長します。
9R4:晩生(Rembrandt Tulips)(レンブラント系)花びらにストライプの模様が入る花を咲かせます。45~65cmの高さに成長します。
10P4:晩生(Parrot Tulips)(パーロット系)大きい花でフリルやツイストの花びらを持ち、50~65cmの高さに成長します。茎が弱いため大きな花を支えることができないため支柱が必要です。
11DL4:晩生(Double Late Tulips)(八重遅咲き系)牡丹に似た大きな華やかな花を持ちます。晩春に花を咲かせ、40~60cmの高さに成長します。茎が弱いものもあり、風雨の中では大きな花を咲かせません。
12K1:超早生(Kaufmanniana Tulips)(カウフマニアナ系)花は長く2色の花を持ち春一番に花を咲かせます。10~25cmの高さに成長し、ロックガーデンやコンテナが理想的です。
13F1:超早生(Fosteriana Tulips)(フォステリアナ系)大きく長い花が咲きます。早春に咲き20~40cmの高さに成長します。植栽のアクセントに適しています。
14G1:超早生(Greigii Tulips)(グレイギー系)紫茶色や栗色に葉脈または斑点の模様の葉が楽しめます。早春に花を咲かせ、23~50cmの高さに成長します。
15M1:超早生~(Miscellaneous)(原種系)野生系のチューリップ、通常のものよりも小さい花で繊細なイメージです。7.5~45cmの高さに成長します。早春に咲くものが多いです。

チューリップ育種家“清都和文氏”

チューリップ育種家“清都和文氏”

匠が選び抜いたチューリップ

富山県の球根生産の歴史は古く、球根産地としてオリジナル品種を持つことの大切さを認識していた富山チューリップ育ての親の水野豊造(みずのぶんぞう)氏は、昭和27年(1952年)わが国最初の3品種「天女の舞」「王冠」「黄の司」を発表して以来、生産者が育成した品種は60品種を超えています。

育種農家品種名画像特徴
水野豊造天女の舞天女の舞
王冠王冠
水野豊孝ザ・グレゴールミズノザ・グレゴールミズノ咲き進むにつれ山吹の花色に赤い絣が広がる色変種
高木正夫とやまレッド富山県チューリップの“フラッグシップ”と位置付けている品種
黄小町の突然変異種
夕やけ小町夕やけの空を思わせる花色が特徴的
黄小町の突然変異種
杉原重信乙女桜桜色の可憐な花が人気。
アンジェリケ×ワーサの交配種
情熱の花火フリンジ×八重のボリュームあるオレンジ色品種
アンジェリケ×ワーサの交配種
魔法の花火まるで花火のように豪華な花はまるで魔法にかかったみたい
アンジェリケ×ワーサの交配種
きらきらドロップローズピンクの鮮やかな一重咲き
アンジェリケ×ワーサの交配種
コモモコモモ桃×白の愛らしい花で背丈が低く鉢植え向き
アンジェリケ×ワーサの交配種
母の日母の日幾重にも重なるフリンジの八重咲きの極晩生種
アンジェリケ×ワーサの交配種
ルビーのつばさワインレッド色の大人色のフリンジ咲き
アンジェリケ×ワーサの交配種
伊藤仁嗣はちみつミルクはちみつがとろけるような模様が特徴、フランソワーゼの突然変異
いちごスター上から見るといちご色の星のように見える、バラードの突然変異
清都和文月浪漫煌々と輝く月を彷彿させる、フランソワーゼの突然変異
由子愛娘の名を付けた一重咲き、ローズビューティの突然変異
いぶきいぶき春のいぶきを感じさせる極早生品種、斑入り葉
藤田隆正楊貴妃桜色が人気、チャイナピンクの突然変異
青木長次あけぼの萼(がく)が特徴、ジュエルオブスプリングの突然変異
新拓新拓花弁が萼(がく)に変化、あけぼのの突然変異
茜茜色の豪華な八重咲き、あけぼのの突然変異
高島 洋シモンシモン深みのある濃紫に白覆輪のシックな花色が人気、交雑品種
カムロ青みがかったローズピンク色の一重遅咲き、交雑品種
玉鬘(たまかずら)玉鬘(たまかずら)和の趣ある雰囲気から源氏物語「玉鬘の君」から命名、交雑品種
明日香明日香ほのかに香る赤白の二色咲き、交雑育種
浦滝俊雄紅美人紅梅色の花色が美しい、白雪姫の突然変異
小林与三雄火の舞ゆれる姿はまるで炎が舞うような個性的な花形
清都常嗣火の舞 勇猛な獅子のような姿から命名
杉沢啓作金魚金魚風にそよぐ姿がまるで金魚のよう
石田隆紀隆貴艶やかな趣ある品種
らいおん丸らいおん丸らいおんのたてがみを彷彿させることから命名
山田有年立山の春立山の春インプレッションシリーズのローズピンク色
青木栄二オレンジビレッジオレンジビレッジ温かみのあるオレンジ色
城宝幸三郎ゴールデンエンパイヤステート鮮やかな黄色品種、エンパイヤステートの突然変異種
富山県球根組合桃太郎はっきりとした桃色と白の二色咲き

富山県園芸研究所の育種品種